 iPhoneのコンパスアプリに水平器が無くなった

 iPhoneに水平器などある事すら知らない人の方が多いと思います。一般の人には必要ないと思うのですがiPhoneにはあったのです。あったはずなのです。

 事の始まりは「バリアフリーのための車椅子用スロープについて」と言う話題で、建築関係の指針に「高齢者に配慮した住宅の在り方」についての中に車椅子を利用する場合を想定した設計に対する事柄について書かれていると聞いたので読んでみました。

 建築の基礎知識 - 建築の基礎知識

その中に傾斜路スロープについても書いてあります。

スロープは1/12以下とする。 外部スロープは1/15以下が望ましい。 有効幅は、120cm以上とし、車椅子を考慮する場合は、150cm以上とする。 踊り場の設置は、起点、終点及び75cm以内に踊り場を設ける。 踊り場の幅は、150cm以上とする。 手摺は、床面から75cmの位置に設ける。手摺の端部は、危険防止のため、45cm以上水平に伸ばし折り曲げる。 側壁のない側は、車椅子の脱輪防止と危険予知のため、5cm以上の立ち上りを設ける。

 1/12とは具体的にどれ位の傾斜になるのだろう。単純に考えて12メートル進んだら1メートル高さが上がる勾配という事になります。普通の家庭の玄関の上がり框(あがりかまち)が20cmとして1/12では2m40cmが必要になります。が現実的には無理なのでこの場合1/8ほどの数値が適用されることが多いようです。それでも1m60cmが必要になります。加えて玄関まで階段がある場合はそこにもスロープがなければ上がり框まで到達できません。例えば1段15cmで3段あれば45cmになる訳で1/8でも3m60cm、1/12では5m40cmが必要になります。この数字をクリアできる環境もなかなかないのでコノ字にカーブさせたりして設計されます。1/8で7°、1/12になると5°弱の勾配です。1/8では介助する人が押すのがやっとの勾配で1/12は建築基準のバリアフリーと呼べる値ですのでこれなら高齢者や女性でも押せる勾配で公共の施設、病院などのスロープはこの基準を満たしています。

 そこで本題に戻ります。以前本棚の設置や額縁の傾きを測るためにiPhoneのコンパスアプリで水平器を使ったことがありました。冗談半分に試して楽しんだ事を思い出します。そこでiPhoneのこの機能を使って現在の家屋のスロープの再チェックしたり今後のために計画する上でのデータを集めようとしましたが肝心の水平器機能がコンパスアプリにありません。友人に尋ねるとiOS12からは水平器機能はコンパスアプリではなく計測アプリの方に移動したそうで確認したらありましたので現在あるスロープ等はiPhoneで確認出来ました。あと斜辺の長さが計測しにくいところは計測アプリを利用するのも良いと思います。また計算機アプリを横向き(ランドスケープ)にすると三角関数計算も出来るので助かります。そして、計算上の勾配を測るのには水平と垂直それぞれの斜辺の長さがわかればいいのですが、一方しかわからず、代わりにスロープの長さがわかる場合には、計算式で、わからない一辺が求められます。「三角関数」の検索で出てくるCASIOのサイトを利用すれば簡単です。

高さと斜辺から角度と底辺を計算 - 高精度計算サイト

 ざっと現在あるスロープを検証してみましたが、まったくダメダメの不合格でバリヤだらけの家と言う事になりました。そこはそれ、みんなで助け合えば、とか根性でなんとかすると言う問題ではなく切実な現実が目の前にありました。

f:id:tomi_kun:20190917190749j:plain

※上の図のとおり今のスロープは1/8どころか限りなく1/4に近くとても車椅子での利用は危険で不可能です。だけど作る方(設計・施工)もよく作ったものだとも思います。13°というとスキー場でも結構上のクラスじゃないかと思います。
 誰でも歳はとるし、不慮の事故で歩けなくなる事もあります。そんな時のために心の準備が必要かと思います。

See you tomorrow!

follow us in feedly