生まれて初めて揃えた瓶入りのインクが色彩雫の月夜だ。初めてのインクは青色に決めていた。
調べてみると青色は色彩雫の中だけでも8種類あった。無難なところで月夜と深海で迷った。正直言ってその頃に色の違いは、はっきりとは分からなかった。半分、名前の響きの良さで月夜に決めたんだと思う。ブルーブラックと呼ぶには明るい紺色だった。
お気に入りの月夜だったが、せっかく万年筆を使うのだからと派手めの紺碧にすぐ変えてしまった。
万年筆の良いところは、こうやって好きな万年筆に好きな色を自由に変えて楽しめるところだ。コンバーターという器具で好きなインクを吸入して万年筆にさして使える。ただ差し替えるにはインクをすべて抜き綺麗に水洗いしてインクが混ざらないようにする必要がある。そのために残ったインクは捨ててしまうので頻繁に繰り返すのも考えものだが。
まだ万年筆の初心者でインクの事もわかってもいないのだが手に入れたインク、つまりある程度は使ったインクの事はわかってきたつもりだ。月夜というインクは闇夜の黒に近い紺色のなかに、ふっと浮かぶ月のまわりの薄い黄色があたってほんのり緑がかった紺色なのだ。温かみのある色、そんなことが、やっと分かってきた。
今日、久しくあえなかった人に逢えた 。お話、近況や想い出話も出来た。いろんな意味で懐かしかった。いろんな意味で今とはまったく違った社会だった。ぎゃくに、その頃のことを思い出すと今の生活が信じられない。もう、もとには戻る事はないだろうが
家に帰って万年筆をとりだして書こうと思ったが、ふとインクを月夜にまた戻してみよう と思った。
See you tomorrow!