 万年筆で文字を書き続けられる理由


 去年の今日のブログは万年筆を使い始めたときの記事でした。カクノ万年筆にcon-40のコンバーターを用意して色彩雫の月夜が届くのを待っている様子が書いてあります。 万年筆とインクの色 [色彩雫][kakuno][PILOT] - tomi_kun’s diary もう一年、まだ一年と懐かしくも思います。やっと指を汚さずにインクの補充が出来るようになりました。心配したほど万年筆やインクの沼にもハマることなく過ごして来られました。メインの万年筆、パイロット社のカスタム74もトラブルもなく使えているので感謝しています。

 いつも当たり前のように使っている万年筆ですがまだまだ分からないことがたくさんあります。インクフローが潤沢だとか、やはり金ペンは書き味が柔らかいとか知ったようなことを言っています。しかし実のところ、どういう仕組で万年筆で文字が書けるのか、そんな事さえ知らないのです。

 万年筆は軸の中のカートリッジやコンバーターにインクがあればいくらでも文字が書けます。しかし万年筆の手入れを怠ったり長い間使わずに放っておいたりすると書けなくなってしまいます。万年筆は意外とデリケートな筆記具です。そこで万年筆の根本的な原理、仕組みを理解すると注意しなければいけないことも分かってきます。

 万年筆の書ける仕組み

 万年筆の機能は第一にインクを貯めてあるタンク(カートリッジやコンバーター)からペン先に適切な量のインクを運び続ける事です。万年筆のペン先を紙に触れさせるとインクは触れている間だけ供給されます。紙から離せば止まります。これには毛細管現象と気液交換作用が使われています。液体中に細い管(毛細管)を立てると管内の液面が管外の液面より上がる現象、つまりペン先が紙の細い繊維に触れることによってインクが細い方へ流れます。と同時に流れをスムーズにするためには流れ出たインクと同じ量の空気をタンクに入れる必要があります。このためにペン芯にはインクが通るインク溝と空気を取り入れる空気溝があります。これが気液交換作用になります。また、インクタンクに空気が取り込まれると気圧変化の影響を受けてインクが出すぎるという問題が生じます。たとえば飛行機や高所で気圧が下がった場合インクタンク内は通常気圧のままなので、インクが勢いよく出てしまいます。その防止策としてペン芯に細い溝(くし溝)を切って余分に引き出されたインクが保持されるようになっています。
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 細くて小さな万年筆の中で実に繊細な作業が行われている訳です。気圧や気温の急激な変化そして強い衝撃には弱いメカニズムです。お気に入りの万年筆を長い間使い続けるにはそれなりの気配りも必要かと思います。
See you tomorrow!

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